2008年1月より、岩手県久慈市にある水族館”もぐらんぴあ”のリニューアル工事を請け負うことになる。
数社の中から、当社の提案が市に支持して頂いた結果であった。
これまで教育的・文化的機関の大きな役割を務めてきた水族館は、時代と共に高いデザイン性とエンターテイメント性をも兼ね備えた施設に変貌してきている。
来館者は水族館の位置づけを他の一般レジャー施設と比較するようになり、その要望は多様化が進んでいるというのが現状だ。
そのような状況から、今後の展望を見据え、「おもしろそうだ、行ってみよう!」と思ってもらえる、わかりやすい企画を提案した。

【もぐらんぴあ】
基本的には、当社は観賞用海洋生物の専門であり、その知識と経験をベースにした提案をしている。
それでも多様な要望に応えるべく、デザイナー坂巻氏とタッグを組み、サイン関係を含めてその演出方法にこだわってみた。(※下の画像にある文字部分をクリックすると、それぞれの説明をしている記事へ移動します。)

各ゾーンのビフォー・アフターをご覧頂きたい。
動線の流れをテーマに基づいてわかりやすくしたことに加え、リニューアルオープン後も、小さな手間で展示内容の変化が可能なように工夫している。

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まず、入り口に立つと正面に現れるサンゴ礁水槽(沖縄県石垣島)。
かつてはモルタルで作られた人工サンゴの水槽に熱帯魚が泳ぎまわる様子が見られた。光の色合いも若干の黄色味をおびた白系の光。
一定量の魚を投入すると、飼育に難あり、という問題点もあった。

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ろ過システムを大胆に変更。
安定してサンゴ礁と熱帯魚を維持できるようにした。この水槽では”本物”にこだわった。生きたサンゴ岩を土台に使い、極力景観を損なうパイプなどは隠した上で、生きたサンゴをレイアウトしていった。
サンゴ礁に住む生体をそのまま見せることに重点を置き、サンゴ礁に見え隠れする熱帯魚とともに、海藻、エビ、カニ、ヤドカリ、ナマコ、貝など自然のバランスを考えて作り上げた。
さらにサンゴや海藻の成長に欠かせない照明には特にこだわり、自然界水深2〜3メートルの光の波長を演出するためのランプを2ヶ月かけてオリジナルで製造した。これで飼育環境は整った。
水槽内のサンゴたちは、リニューアルをスタートとし、水槽内で成長し、増えていく。
サンゴがそこに住む生体の家の役割をしていることや、サンゴにはさまざまなカラーパターンがあり、美しい動物の仲間であることなどをたくさんの人に知ってもらいたい、というメッセージ性を持ったコンセプトが盛り込まれている。
水槽内の生体の名前を調べるのにも、あえてブック型の魚名版を用意し、来館者が興味を持って自ら名前や特性を調べられるように工夫した。

【ブック型の魚名版】




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まったく新設のゾーン。水槽を通じて“水の中にいるような雰囲気で記念写真を撮る”ゾーンの要望にお応えしたもの。
かなり遊び心を加えて作ったため、費用も労力も予想以上にかかってしまった。
5メートルのカクレクマノミには口からも尻尾からも通り抜けできるようになっている。
体の中に入ると、泡が出ている水槽は内部のボタンを押すことで泡を操作できる。
泡を止めた状態で写真撮影をすれば、魚の骨組みがバックに写りこみ、魚に食べられてしまった状態での写真撮影が可能となる。熱帯魚が泳ぐ水槽越しの写真撮影も可能。子供たちが魚のアクリル目玉に頭を突っ込んで水族館内を見ることもできる。
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同じような水量・形状・照度の水槽が6本並び、特徴ある生物を展示する、といった感じの展示であった。
水槽景観は、モルタルによる作りこんだ岩盤のみであったため、水槽のイメージチェンジを図るのに何かしらの演出が必要であった。
また、個々の水槽をつなぐテーマが明確でなかったことが原因で、動線の流れを作れていなかった。
以下の写真は、施工前の水槽の様子。



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動線を考慮し、水族館入り口から沖縄県石垣島、鹿児島県奄美大島、高知県柏島、静岡県駿河湾、東京都東京湾、岩手県久慈湾、北海道オホーツク海、と南から北へ北上する形で日本各地の海を紹介する。
生体の種類にもこだわるが、水槽内の造作・照明による演出には特にこだわった。
深海を演出する赤い照明、冷たい海を演出する暗くて青い照明。
東京湾の水槽内には、錆びた自転車の車輪や朽ち果てたゴミやペットボトルを沈め、地元久慈湾の水槽には、本物のホヤをかたどったレプリカのホヤ棚を演出した。
水槽の隣同士の照明の照度に変化を与え、来館者が足を止めてゆっくり個水槽を見てもらえるようにと考えた。

【鹿児島県奄美大島】

【高知県柏島】

【静岡県駿河湾】

【東京都東京湾】

【岩手県久慈湾】

【北海道オホーツク海】

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円柱水槽が4本並び、各照明の色をラミネートなどを使って変化を加えている。
クラゲ飼育者だとピンと来るかもしれないが、1年を通じてクラゲを展示する場合には多くの種類のクラゲに対応する準備をしなければならず、水槽の形状とクーラーがついてないハード面が問題となっていた。

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水槽を丸円型に作り変え、ほとんどのクラゲの飼育に対応可能な形状にした。すべての設備にクーラーを備え、照明は水中LEDを使用するなど飼育環境の改善・メンテナンス作業の簡素化に努めた。
サイン・パーテーションのデザイン性もぐんと向上し、クラゲをギャラリー風に演出することができた。

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”もぐらんぴあ”の顔となっていたのが、この『神秘の洞くつ』、トンネル水槽だ。
25トンの水槽には白系の光の中、多様な熱帯の中型〜大型の魚が泳いでいる。ナポレオンとアオウミガメが目玉的な存在だ。
水槽上部からはシャワー式に水が降り注いでいるが、下から上を仰いで見ると、上部の背景が丸見えになっていた。

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”海中洞くつ”をテーマに、主に青い照明による演出にこだわった。トンネルとFRPの壁の距離が短く、圧迫感が感じられたため、濃い青系の照明に変え、光は中心線に落ち込むように配慮した。
これまでいた魚の体色(特に黄色系)を鮮やかに表現し、水面を泳ぎまわるサメの導入で、サメの姿を影絵として見せられるようにもした。
13年間ここで育った魚たちにダメージを与えないように、また、彼らの違った魅力をどう演出できるかがポイントであった。”もぐらんぴあ”が全国唯一の地下水族館であることから、海中洞くつをテーマにしたのである。

【サメの搬入】

【トンネル水槽】
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このゾーンは、いちばん奥の空間になっていて、行き止まりになっている。
壁一面にはブラックライトで海洋動物の絵が浮き上がる仕掛けがされているが、そのために部屋全体は暗く、中央の円柱水槽で何を見せるかが大きな課題であった。
展示内容も幾度となく変わっており、リニューアル前の内容は中型の淡水魚が数尾泳いでいる、といった印象であった。
これを以下のような図面でデザインした。


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暗い空間をさらに遮光壁にてトンネル水槽と仕切った。
それは発光生物を展示するというテーマに掲げたため、思い切って部屋をほぼ真っ暗にしてしまおうというものだ。
生物を、ヒカリキンメダイに選定し、水槽内をピカピカ光りながら乱舞させる。
発光の様子が、写真ではうまく表現できないため、実際に水族館へ行って体感していただきたい。
このホールでは“発光”をテーマに生態を魅せるための空間作りをし、1年中見られる“海のホタル鑑賞会”をイメージした。
規模的にも全国随一の新癒し空間と位置づけている。
2008年3月22日、”もぐらんぴあ”は、晴れてリニューアルオープンし、たくさんのお客様が来館しています。
春休みが終わっても、その勢いは続き…
テレビや新聞の取材も多く入っています。
もっともっと新生”もぐらんぴあ”を知ってもらい、たくさんの人に”海”の美しさ、楽しさを知ってもらいたいと思います。

【あっ、テレビの人たちもきてるよ】

【マスコットのもぐらん、らんちゃんがお出迎えでーす】

【へぇ、このサンゴ、生きてるんだって!】

【ん?このホヤは本物じゃないのか】