ウィークリー水族館ウォッチ 第16話

ブルーコーナーマガジン, 水族館ウォッチ 

琴水母【新江ノ島水族館】

新江ノ島水族館にてまた新しい貴重なクラゲの展示が始まりました。

それはコトクラゲです。

79年ぶりの再発見となったことで話題を呼んでいます。

というのも79年前(1941年)に発見した時は昭和天皇が江の島沖水深70mの底生生物調査で採集され,新種登録されたというのです。

それ以降は2005年に鹿児島県野間岬沖での採集が67年ぶりとなり,近年では沖縄県恩納村沖,駿河湾などから採集されていました。

今回の79年ぶりというのは新種登録をした相模湾(原記載地)での採集ということになります。

 ※写真の個体は沖縄美ら海水族館の展示個体です。

新江ノ島水族館は2019年から深海探査共同プロジェクトを産業用水中ドローンメーカー『FullDepth』(東京都台東区)と行っております。

今回の採集水深は130m付近とのことですが,以前に駿河湾で採集された個体も130-140m付近で採集されております。

この水深であれば季節によって水温にも影響が出てくる深さですが,基本的には固着生活を送るクラゲなのである程度の環境の変化には適応できる能力を持っているのかもしれません。

 

コトクラゲは見た目はクラゲっぽくないですが毒を持たない有櫛動物門に属する立派なクラゲになります。

見た目が竪琴に似ているから標準和名はコトクラゲ。

学名の(Lyrocteis imperatoris)は上記にあるように昭和天皇にちなんで「皇帝」を意味するimperatoris と献名された立派なクラゲになります。

コトクラゲは毒は持っていませんが粘着質の触手を腕(うさぎの耳のような部分)の先から凧の紐のように伸ばし,流れてくるプランクトンや小型の生体を絡めとり摂餌しています。

運が良ければ水槽内で触手を伸ばしている姿も見れるかもしれません。

場所は変わってガラパゴスの深海では30種類の新種の生体が見つかったとニュースを見ました。

今後,Fulldepthのような企業や技術者の方が深海へ力を入れ始めると,水族館での新種展示の実現もそう遠くないのかもしれません。